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LGBT支援ハウス コロナ影響緊急アンケートの結果報告について

アンケートの背景と目的

【背景】
・今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、仕事や収入が減ることで、今後、住まいを失う方が増えることが予想されますが、LGBT当事者においても、そうした影響は、どのように現れるか、貧困によって住まいを失ったLGBT当事者に住居を提供するなどのサポートに活かすために把握する必要がある。
【このアンケートの目的】
・LGBT当事者の方々が、仕事や住まいについてどのような困難を抱えているのか、これからどのようなサポートがあるとよいか現状を把握し、行政への施策提言や私たちの活動の充実につなげていく。

調査概要

◯実施主体:LGBTハウジングファーストを考える会・東京
◯正式名称:LGBT支援ハウス緊急アンケート〜新型コロナウイルスによる仕事や住まいなどへの影響〜
◯調査方法:ウェブ上のアンケートフォームを利用 (Google form)
◯回収期間:2020年5月2日〜6月5日 (35日間)
◯回答者数:122人
◯調査項目:属性:性自認または性的指向・年代・経路・当会の存知
質問:(1)仕事・収入への影響 (2)住まいへの影響 (3)希望するサポート
◯告知方法:当会Website、Twitter、Facebookで周知の他、g-ladxx取材記事等

データの取扱について

今回の調査は、「オープン型ウェブ調査(非確率標本:調査実施者が広報を行い、協力者を集める)」のため、集まった回答は社会全体の正確な縮図にはならない、一方、調査テーマに強い関心の持つ層が自発的に回答するため、無作為抽出では把握困難な人口層の実態を捉えることができる等の特徴があり、回答数も120程度と十分の数がないため、調査の回答傾向を一般化することはできないといえるので、調査結果の取扱には注意が必要である。

回答の概要

◯回答数:122件

◯これまでにLGBTハウジングファーストを考える会・東京のことを知っていたか。
「はい」28名、「いいえ」93名

【質問1:仕事や収入への影響】

<LGBTならではの回答>
・ゲイバーのマスター(マネージャー)だが収入が激減。(40代、ゲイ)
・ゲイバーで仕事、自粛休業となり収入がゼロ。(30代、ゲイ)
・マッサージと飲食4月頭に完全休業。今はその日仕事。毎日仕事ない、生活はギリギリ。(ゲイ、20代)
・飲食店やバーの営業自粛に伴い、収入が0。(ゲイ、30代)
・勤務先のゲイバーで休業で辛い。カミングアウ済みの親と過ごせるので救われている。(ゲイ、20代)
・半年前にうつ病で会社を退社 (約2年間傷病手当もなくなくなり、借金をすることに) ゲイバーでスタッフをしながら (週3)なんとか生計をしていましたが、 ゲイバーがコロナの影響で 閉店(完全に閉店クローズ…今後コロナ終息後も)(ゲイ、40代)
・メンエスのセラピストだが休業になり収入が無くなった。(トランス女性、30代)
・夜の仕事なので、生活保護から抜け出す予定が白紙になった。障碍者雇用を目指そうと就労移行支援に戻ろうと思う。(トランス女性、40代)

<一般的な回答>
・スーパーマーケットなど感染リスクの高いところに応募している。(40代、ゲイ)
・業務委託契約していた会社が営業自粛となり、収入がゼロ。
アルバイトも探して面接中。どうしても外に出て仕事をしないと生活していけない状態。(20代、ゲイ)
・本業は出勤継続だが、 副業が雇い止めで無収入、 ローン返済や家賃支払い等に影響ある。(40代、ゲイ)
・イベントの仕事で全く仕事がない状況。(40代、ゲイ)
・4月に東京に戻る予定でしたが、 コロナの感染者が増えてきていたので、 コロナが落ち着くまで、(地方都市)で配達員をやる事したが、事故に合い、今月の収入が減り、 現在、家賃を5月10日まで待ってもらっています。(30代、ゲイ)
・介護サービス業界。顧客がへりし時間外手当てほほ無し。毎月五万円近く収入減少中。(40代、ゲイ)
・製造業派遣で無期雇用なので切られる可能性は低いが、転勤や配置変えパワハラの可能性が無いわけではないので、今後が不安です。(50代、ゲイ)
・内定をいただいた勤務先も入社日が先延ばし状態で、アルバイトも決まらず生活が苦しい。(20代、ゲイ)
・訪問看護ステーションでリハビリの仕事だが給与3%減。副業先からの給与も0。(20代、ゲイ)
・フリーランスなので仕事が全くない状態(レズビアン、30代)
・現在、就職活動中だが面接のメドが立っておらず収入がほぼない状態。(ゲイ、30代)
・外回り営業(お酒関係の会社)の仕事のため、完全に仕事が無く今現在収入がない状態。(ゲイ、20代)
・アパレル百貨店販売なので、自宅待機中。3月に頸椎に細菌が入り入院し、今月一杯休職中。収入が傷病手当のみ。(50代、ゲイ)
・会社が潰れるので、7月以降に無職。(ゲイ、30代)

【質問2:住まいへの影響】
<現に住居なし>
・現状はネットカフェだったり、公園だったり(30代、バイセクシュアル男性)
・5/11には社宅を出なくてはいけません(30代、レズビアン)
・仕事が無くなったために家賃の支払いが難しくなったので、都内の友人の家に少しの間泊まることになりました。
実家は地方のため、ウイルス拡散防止のためになるべくは帰らない方向で色々と考えてた矢先に友人が自分の家を提供してくれたのでとても助かった。(20代、ゲイ)
・今現在滞在してるところは、友人宅・また相方宅を転々としている状態です。(30代、ゲイ)

<住居をなくす恐れあり>
・収入がなく、家賃を含め光熱費を払うのがギリギリです。(50代、ゲイ)
・この状況が続いていくなら、 いずれホームレスになってしまうおそれがあります。(40代、ゲイ)
・貯金が尽きる前に稼きを確保しないと一人暮らしの部屋を退去。その際は実家へ帰る予定。(20代、ゲイ)
・貯蓄がかれるほど続けば家賃が払えず住む場所がなくなる。でも、コロナの被害もコロナの救済もLGBTとは関係ないと思う。普通に他の人と同じように被害にあっているので。(40代、バイセクシュアル女性)
・賃貸を追い出される可能性があり。住んでる人の権利でしばらくはどうにかなるか。家賃が払えない人の行政窓口があるのでなんとかなれば良いかと思っている。金銭的に頼れる人はいない。(ゲイ、50代)
・友人とルームシェア中。この状況があと2~3ヶ月続けば、家賃支払いがままならなくなる。(20代、ゲイ)
・ほとんど収入がないので、支払うことが出来ず、居場所がなくなってしまう。(40代、ゲイ)
・都内に部屋を借りていますが、家賃が払えなくなるので、住居確保給付金を申請予定です。(30代、ゲイ)
・緊急事態宣言発生後に無職になり、求職活動中。アルバイト等の求人も無く収入も保証も無いので来月には退去命令が出る(40代、ゲイ)

<家賃滞納中>
・今のところは家賃支払いを待ってもらっている状況。(20代、ゲイ)
・家賃支払がきついので5月分は家賃支払えてません(40代、ゲイ)
・収入がないため家賃生活費に困窮しています。(30代、ゲイ)
・コロナの影響で仕事がなくなり、収入も大分減り月収10万円いかないので、家賃滞納中。これから続いたら退出せざるおえないです。(20代、ゲイ)

<地方在住>
・年内は東京に戻れそうもないので、地方都市で就活する予定。マンスリーマンションを借りてるが、 家賃代を稼ぐのに日々追われ、 精神的にギリギリです。(30代、ゲイ)

<実家・家族同居>
・スタッフ収入がなくなり、 マンスリーマンションの家賃も支払えないために 一度荷物をレンタカーに積めて実家に帰省(40代、ゲイ)

・母親から同居を勧められていますが、母親は持病があり、金銭的にも余裕がなく、母親との同居は難しい状況。父親はお金には余裕があるが、地方在住の為、実家に帰る、となると今の仕事は全て辞める必要がある。現在、家賃が7万だが、長引くようであれば引っ越しも検討。引越資金もなく、出るに出られない。(20代、ゲイ)

・今は家族で上京して首都圏在住ですが、両親共に職を失ってしまい毎月の生活費がどんどん引かれていくばかりなので、地元に帰る事を視野に入れて生活している。 自分の場合はそれでも内定いただいてるうちは地元に戻るという選択肢はありません。(20代、ゲイ)

<住まいと仕事連動>
・住み込みの宿泊業で、現在職場は休業中です。6月までは休業手当が100%出ますが、その後はわかりません。転職する場合、住まいも一緒に失うので不安。(レズビアン、30代)

・営業自粛の影響で、無収入のため店舗や自宅の賃料を捻出出来ないため(30代、ゲイ)

【質問3:今後必要なサポートについて】

<LGBTならではの回答>
・退去させられた人へのシェアハウスでLGBTに特化する事で、救う対象や日常復帰へのアドバイスも明確に行える。(40代、ゲイ)

・報道によって自分がセクシュアルマイノリティである事を晒されるのがこわい。なので、それを本人の意見を尊重して、入院している病院側、もしくは何らかの機関によって、記入用紙等を配布していただけると良いかもしれない。
専用の相談ダイヤルから、マイノリティの人が怯えることなく相談し、もし体調に異変がある場合、その相談ダイヤルを通して、個人情報を保護し、かつ、適切な医療機関への紹介を出来ればいいかな。とも思います。(20代、トランス女性)

・仕事、住居、全てがゲイとして生きたいと思っているので、地獄に行く心境です。(40代、ゲイ)

・仕事をして社会的地位を確保しながら贅沢ができなくても安心して死ねるような環境が欲しいです。(50代、ゲイ)

・ゲイバーの影響再開が世間的に認められること(20代、ゲイ)

・安心できる場所づくり、そこにアクセスする方法を知ることができれば助かります。(30代、ゲイ)

・私は、彼氏が一年ほど、在留資格の延長の繰り返しを続けていて、働けない。そのため、家に閉じこもり続けると、心が疲れて、疑心暗鬼・被害妄想も強くなる。そのため、従事している感じが得られることを、探してきたが、本人のモチベーションに沿わないと、全く手につかず、機嫌も悪くなり、支援している私を責めたりするなど、関係の危機も感じる。
なので、まずは住むことが第一だが、住むところはあるが外に出られない、仕事無い、不安…という人への支援は、何かに従事しているという気持ちを持てることがあればいい。
一方的に、施しされ、ご厄介になっているということも、何かの拍子に周囲や支援者への不満や怒り…本当は自分に対するものなのですが…に繋がるようです。(40代、ゲイ)

・個人事業主とか会社ばかりしか補助金出ないから、個人のそして更に親にも言えないゲイやマイノリティーは、 自分の家族もできなかったりするので 本当に孤独ですし、精神的にも辛すぎです。 どうにかしてほしいと切に願います。(40代、ゲイ)

・どこから支援して欲しいかわからない程毎日混乱している(40代、ゲイ)

・今はひたすら日々なんとかしようと動いてるのでなんとも解決のヒントも思い浮かばない。(20代、バイセクシュアル男性)

<生活保護関係>
・生保申請への同行支援(40代、トランス男性)
・生活保護の利用への支援(50代、ゲイ)
受給開始までのタイムラグをカバーする適正な居所の確保(民間シェルター、東京都のビジネスホテルへの緊急収容等)と金銭的支援(50代、ゲイ)
・生活保護受理サポートする包括支援センターやケアワーカー(40代、バイセクシュアル女性)

<相談窓口等>
・相談窓口の設置(40代、トランス男性)
・電話やネットで週に10分でも専門知識のある方と話(40代、ゲイ)
・家を追い出されることになれば、 電話相談(40代、ゲイ)
・心も不安定なので寄り添うような支え(50代、ゲイ)
・簡単に連絡の出来るツール(30代、レズビアン)

<資金援助>
・通常のハウジングのサポート+資金(50代、トランス女性)
・現金の支給、または家賃や光熱費等の生活費用のサポート・家賃補助(40代、ゲイ)
・引っ越しをする為の資金だけでも調達(40代、ゲイ)
・家賃支払いの延期免除。(40代、ゲイ)

<住宅の提供>
・LGBT ハウスの拡大(40代、トランス男性)
・大家もしくは不動産屋へのアプローチもしくは金銭面の一時的なサポートで現住居継続支援(30代、ゲイ)
・住居を失ってしまった時に一時的に体制を整える場所(家と相談できる所) (30代、レズビアン)
・泊められる、空き部屋がある人と、住む場所を失いそうな人を繋ぐ(適正価格で、犯罪や性暴力につながらないように間をとりもち、トラブル時に相談にのり解決に力を貸すような)サービス(50代、レズビアン)
・住まいを無くしてしまう前にサポートがあるとなおよいと思う。(40代、ゲイ)

<就労支援>
・単発でもいいので仕事の紹介(40代、ゲイ)
・仕事の求人。仕事があれば、家賃が払える。(40代、ゲイ)
・住まいだけでなく、仕事も紹介などもっとトータルサポート(30代、ゲイ)
・仕事先の斡旋(40代、ゲイ)

【分 析】
質問1「仕事・収入」と質問2「住まい」への影響について、回答の内容から1.危機的で介入が必要な状況、2.まだ持ちこたえられるがサポートが必要な状況、3.軽微な影響を受けている状況、4.影響ない状況、5.無回答の5段階で当会として評価を行ってみた。結果は以下の通りとなっている。

まずは、仕事の方に厳しい影響が与えられていることが分かる。
今後時間の経過により住まいへの影響が現れてくることが懸念される。

考察

(同じような影響を受けている)
・仕事について、コロナの影響は、LGBTの当事者にとって、LGBT以外の方と同じように様々な職種・業種にわたり、中間層まで含めて影響を受けていることが伺えた。

(複数の要因が重なることで生活困窮に)
・副業などダブルワークをすることなどでギリギリ生活を維持していた方々が、本業のみならず、副業がなくなることで、生活が困難に陥るなど、自己努力で覆い隠されていた生活の困窮状況があらわになった例も多く見受けられた。
・精神面での困難や障害など、外国籍による課題など、複数の要因が重なることで、生活のバランスが崩れて困窮化してしまうLGBT当事者の生活状況の脆弱さをもっている場合があることもわかった。

(今後は住宅を失う可能性が大きい)
・住宅については、調査時点では、仕事ほどではないが、緊急度が高い例も見受けられ、現に住宅を失っているものや失う可能性が高いものも多数あり、今後コロナの影響が長引けば、住宅を失う人が多数出ることが想定される。

(安心できる場が必要)
・求めるサービスについては、精神的に追い詰められている声やカミングアウトのしづらさによる不安感も寄せられて、LGBTとして安心していられる場(住まい・職場)を求められている。

(「助けて」と言いづらい)
・また、そうしたカミングアウトへの不安や偏見にさらされることを恐れて、行政や支援の窓口や家族など身近な人たちにもSOSがなかなか出せないという、セーフティーネットのへのアクセスはしづらさへの解消も課題であると明確になった。

まとめ

調査にご協力いただいたみなさまに感謝いたします。
いただいたみなさまの声を踏まえて、LGBT当事者への理解と適切な対応がなされるように行政等の支援する窓口やサービス提供者に求めていくとともに、当会の支援体制を強化して、SOSを受け止められる状況を作れるよう検討してまいります。
そして、みなさまの声を引き続き受け付けられるようにアンケート調査を継続していくこととします。

質問項目

<属性についての質問>
a.次のいずれにあてはまるか、教えてください(当てはまる選択肢が2つ以上ある場合は、性自認または性的指向のどちらかを優先してご記入ください)。 *
ゲイ
レズビアン
バイセクシュアル男性
バイセクシュアル女性
トランス男性(FtM)
トランス女性(MtF)
本人ではないが、LGBT当事者を友人、同僚、家族にもつ
その他:

b.年代を教えてください。 *
10代以下
20代
30代
40代
50代
60代
70代
80代以上
無回答

c.このアンケートをどちらで知りましたか。
SNSなどのweb上で
アプリで
人から聞いて
その他:

d.これまでに、LGBTハウジングファーストを考える会・東京のことを知っていましたか。
はい
いいえ

<質問1>
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、お仕事や収入が減っている方は、その状況について教えていただけますか(友人、同僚、家族の立場から、LGBT当事者について回答いただく場合は、その方の年代とセクシュアリティも教えてください)。

<質問2>
新型コロナウイルスの影響で、住まいや寝泊りをしていた場所(居所)を失った、あるいは今後失いそうな場合、その状況について教えていただけますか(友人、同僚、家族の立場から、LGBT当事者について回答いただく場合は、その方の年代とセクシュアリティも教えてください)。

<質問3>
上記の件について、今後どのようなサポートがあるとよいと思いますか。自由にご記載ください。

<質問前文>
今回の新型コロナウイルスの感染拡大により、仕事や収入が減ることで、今後、住まいを失う方が増えることが予想されます。

LGBTハウジングファーストを考える会・東京では、これまでにも貧困によって住まいを失ったLGBT当事者に住居を提供するなどのサポートをしています。このアンケートをとおして現状を把握し、行政への施策提言や私たちの活動の充実につなげていきたいと考えています。

LGBT当事者の方々が、仕事や住まいについてどのような困難を抱えているのか、これからどのようなサポートがあるとよいか、教えていただけますか(なお、友人、同僚、家族の立場から、LGBT当事者ご本人について回答いただいても構いません)。

いただいたご意見は、状況の改善に役立てるために、身元を特定できない形にして、当会のホームページ等で公表させていただく場合があることをご了承ください。また、お名前やメールアドレスなどの個人情報は、ご本人の同意なく、第三者に提供いたしません。

なお、アンケートを送信いただいた際には、受付メールを自動で返信いたします(受付メールが届かない場合は、アドレスに誤りがあった可能性がありますので、ご確認の上、再度入力をお願いします)。

※このアンケートのお問い合わせ先
LGBTハウジングファーストを考える会・東京
info@lgbthf.tokyo

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